フランドルから来たアドリアン・ヴィラールト（Adrian Willaert, c1490-1562）は、聖マルコ寺院楽長として、多数の音楽家を育成し、ヴェネチア楽派の基礎を築きました。フランドルから来た聖マルコ寺院の楽長ですから、当然、ミサ曲などの宗教曲が重要です。
しかし、ヴィラールトは極めて器用な作曲家で、いろいろな様式の曲を作曲しています。フロットラ（frottola）は、マドリガーレの前身となるイタリアの世俗歌曲（下品な内容を含む）で、トロンボンチーノらによって1470年から1530年くらいに盛んに作曲されました。この下品な内容を上品な歌詩にしたのが、マドリガーレということになるのでしょうか。
妻殺しTromboncinoの音楽 - Frei aber einsam
ヴィラールトが作曲したVecchie letrose（意地悪ババア）というフロットーラは有名です。 聖マルコ寺院の楽長の作品です。
Vecchie letrose,
non valete niente
Se non a far l'aguaito per la chiazza.
Tira, tira, tir'alla mazza,
Vecchie letrose, scannaros'e pazze!
英訳
Spiteful old hags, 意地悪ババア
you are good for nothing. 何にもいいことなし
Only for lying in wait in the thicket. やぶから待ち伏せしてる
Beat, beat, beat with your canes, 杖で打て、打て、打て
Spiteful old hags, murderous and mad! 意地悪ババア、人殺し、キチガイ
